救急車で搬送される重症患者の80%以上は1回の照会で受け入れ医療機関が決まっているものの、4回以上の照会が必要だったケースの85%は10都府県に集中し、救急体制の充実度の地域差は大きい――。総務省消防庁が3月11日に発表した全国調査で、こんな傾向が明らかになった。救急の受け入れ状況を全国規模で調査したのは今回が初めて。
総務省消防庁が発表したのは、「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」。昨年から大阪地域を中心に、救急車受け入れ困難事例、いわゆる“たらい回し”の報道が相次いでいる現状を受けて、広く実態を把握するために行った。
調査は全国の消防本部を対象に実施。2007年1年間の救急搬送について、(1)搬送患者数、(2)それぞれの患者が収容されるまでに要した医療機関への照会の回数、(3)医療機関が受け入れ困難とした理由――などを調べた。分析の対象としたのは、重症以上傷病者(3週間以上の入院が必要と初診時に医師が判断)、産科・周産期傷病者、小児傷病者、救命救急センター等搬送傷病者と分類された患者(表1)。
1回 2~3回 4~5回 6~10回 11回~ 計
重症以上傷病者 30万9230件
(84.0%) 4万4609件
(12.1%) 8989件
(2.4%) 4324件
(1.2%) 1074件
(0.3%) 36万8226件
(100%)
産科・周産期傷病者 1万8500件
(82.1%) 2944件
(13.1%) 721件
(3.2%) 310件
(1.4%) 53件
0.2% 2万2528件
(100%)
小児傷病者 26万3925件
(83.1%) 4万5210件
(14.2%) 6377件
(2.0%) 2021件
(0.6%) 220件
(0.1%) 31万7753件
(100%)
救命救急センター等
搬送傷病者 9万7323件
(80.1%) 1万7258件
14.2% 4080件
(3.4%) 2108件
(1.7%) 802件
(0.7%) 12万1571件
(100%)
表1 受け入れ医療機関の決定までに照会した回数とそれぞれの件数
その結果、転院搬送などを除いた全国の重症傷病者41万1625人のうち、受け入れ先の医療機関が見付かるまでの照会件数が4回以上だったのは1万4387件(全体の3.9%)。11回以上照会が必要だったのは1074件(0.3%)だった。受け入れ先が決まり、搬送を始めるまでに30分以上かかったのは1万5656件(4.0%)、60分以上は1721件(0.4%)だった。
医療機関側が受け入れ困難として挙げた理由は、医療機器や人手不足などによる「処置困難」が最も多く(22.9%)、「ベッド満床」(22.2%)、「手術中・患者対応中」(21.0%)が続いた。
全国でみると、重症傷病者の80%以上は照会1回で受け入れ医療機関が決まっているが、内訳をみると、地域差がかなり大きいことが改めて浮き彫りになった。4回以上の照会が必要だったケースの85%は10都府県に集中(表2)。11回以上の照会が必要だった1074件に絞ると、半分近くを東京都が占めていた。
総務省消防庁救急企画室は、「今回の調査から各都道府県の傾向がみえた。受け入れ困難の事案が首都圏や近畿圏など、一定の地域に集中している傾向も分かった」と話す。
表2 重症傷病者の受け入れまでに4回以上の照会が必要だった件数と割合 4回以上照会の割合が高かった10都府県を抜粋。医療機関側が受け入れ困難として挙げた理由は、医療機器や人手不足などによる「処置困難」が最も多く(22.9%)、「ベッド満床」(22.2%)、「手術中・患者対応中」(21.0%)が続いた。
全国でみると、重症傷病者の80%以上は照会1回で受け入れ医療機関が決まっているが、内訳をみると、地域差がかなり大きいことが改めて浮き彫りになった。4回以上の照会が必要だったケースの85%は10都府県に集中(表2)。11回以上の照会が必要だった1074件に絞ると、半分近くを東京都が占めていた。
総務省消防庁救急企画室は、「今回の調査から各都道府県の傾向がみえた。受け入れ困難の事案が首都圏や近畿圏など、一定の地域に集中している傾向も分かった」と話す。
ただし、全国規模の調査は今回が初めてで、前年比較などもできない。何回以上の照会が“たらい回し”に当たるか、“たらい回し”の頻度はどこまで許容できるのかなど、調査結果の解釈は今後の議論となりそうだ。また、集計不能の消防本部についてはデータに入っていないため、現状が正確には出ていない自治体もありそうだ。
図1 産科・周産期救急において、受け入れまでの照会回数が4回以上だった搬送の件数と割合(全国集計)
一般の救急に先駆けて大きく話題となっていた産科・周産期救急については、昨年から全国調査に着手して04年からの件数を集計しており、受け入れまでに4件以上の照会が必要だったケースが年々増え続けていることが分かっている(図1)。
消防庁は「消防機関と医療機関との連携に関する作業部会」(座長:有賀徹・昭和大教授)を昨年12月に発足。月1回のペースで会合を開いている。今回の調査結果を踏まえて、厚生労働省とも連携して対策を検討する方針だ。
(末田 聡美=日経メディカル)
アーティクルリソース:http://articlejapan.com/
|