現代社会は視覚優位の感覚で、見た目の重要性を重視している。
ヒトは五感の中でも視覚で80%以上の情報を脳に送っており、認知し、記憶しているのだ。
特に、現在の子供達や若者達にはこの傾向が更に強く、90%程度視覚に頼り、記憶、認知しているのである。
だから、他の感覚が低下し、若くして衰えているのである。
私は五感の研究を十数年間行なっているが、最近において、嗅覚の研究が俄然注目されているのだ。
嗅覚に関わる企業やレストランのシェフ、化粧品を扱う人達など嗅覚の鍛錬を必要とする人達も多いのである。
中には、嗅覚(匂い)を起業家し、ベンチャー企業として成功した会社も存在する。
特に、医療関係では、癌の発生、癌の初期発見にガン細胞の匂いを嗅ぎ分ける「臭気システム」将来的には携帯電話式の癌探知機なるモノの開発も進んでいる。ヒトが吐く息で探知できるという発想である。
これらの開発のヒントになったのが犬の優れた嗅覚によって、飼い主の病気、体臭の変化を教えることが知られている。
すでにアメリカでは「癌探知犬」なる癌の匂いに反応するように訓練された犬が病院内で活躍しているのだ。
これらの話題は、アメリカだけでなく我が日本でもあるのだ。
麻薬犬として訓練された犬が、癌の匂いを嗅ぎ分ける訓練を続け、日本で初めての癌探知犬が誕生したのである。
犬がヒトのガン細胞の匂いを嗅ぎ分ける成功率は何と99%と高く、日本の専門医が発見できなかったガン細胞を癌探知犬が発見し、患者が救われたのである。また、癌検診は医療費も高額であり、乳ガン検査マンモグラフィー(乳腺撮影)検査は痛みを伴い、乳房エコーは冷たい感覚を伴うなど負担も大きいのである。
そこで、私共は小型の乳ガン検査機器の開発、研究に取り組み、多くの企業や大学の研究者など携わっており、5年以内には実用化が可能ではないかと考えている。
ヒトのガン細胞は、他の癌、肺ガンや大腸癌でも同様の匂いを発生させ、犬の嗅覚では感じ取れるのである。
残念ながら私達ヒトの嗅覚ではガン細胞の発生の匂いは嗅ぎ分けられず、精々、私達が風邪を引いて高熱を出すと独特の体臭になるがこれだと私達は感じ取れるのである。
何故、犬の嗅覚は優れているのか? 私達の嗅覚との差を比較したいと思うが、嗅覚の鋭さは嗅覚細胞の数の差でもある。
私達ヒトの嗅覚細胞は500万個に対して、犬の嗅覚細胞は1億~2億個と違いがある。例えば、嗅覚細胞の数を広げると切手2枚程度の広さが我々人間の嗅覚細胞の大きさと考えると犬の嗅覚細胞は新聞紙を広げたぐらいの大きさがあるのです。
それほど犬と人間では嗅覚の感覚に差があるのです。
匂いとは、匂いのある物質の表面から気化した化学物質の蒸気(多数の分子の集合)が、空気中に希釈されてヒトの鼻腔に吸い込まれ、鼻粘膜に丁度、鍵と鍵穴のような関係で、匂い物質が鼻粘膜の嗅球に取り付き、電気刺激となり、脳の嗅覚野で認識され、そして、第二次嗅覚野に伝わり、大脳新皮質で匂い記憶されるのです。
ヒトが基本的に匂いとして感じる匂いは8種類で、エーテル類、樟脳類、麝香類、汗臭、花臭、腐敗臭、刺激臭、ハッカ臭の8種類です。
ところが、香水の調合師など嗅覚の鋭い人達は嗅覚の鍛錬によって、これら複合した臭いを嗅ぎ分け、何と2000種程度の匂いを嗅ぎ分ける人達が居られます。
これらも日々の訓練、鍛錬の賜なのである。
幾ら鍛錬したヒトが嗅覚に優れているからと言ってもガン細胞の発生の匂いまでは嗅ぎ分けることは無理なのである。
そこで、私共が構想している癌探知機(臭気システム)は当初、医療関係の検査機器として開発、研究を始め、応用として携帯電話内に設置し、ヒトが会話している間に、ガン細胞の匂いを携帯電話がキャッチし、警告を発するというシステムである。
ガン細胞の匂い識別の研究は大分進んでおり、解明されている。
後はハードの問題である。安定し、正確にガン細胞の微量な匂いをキャッチする精度が必要であり、誤作動は許されないのである。
現在は、臨床段階であり、今後のハードとソフトの開発によって、実現化も5年以内を目処に関係者は努力している。
何より、私が期待しているのは、これらの臭気システムの開発の応用として、鳥インフルエンザの早期発見、賞味期限の確認、腐敗の程度など確認できるシステムに繋がると期待している。
身近なところでは、携帯電話で杉花粉などの警報ではなく、警戒量など身体への影響を知らせてくれるシステムである。
このように嗅覚の研究は今後、益々盛んになり、注目されているのです。
医療機器は勿論、ヒトの病気の解明、発見、レストラの経営、商品の企画、販売、開発などにも視覚以外のヒトの感覚が重要な課題になると私は指摘し、企業や関係者に指導している。
今後とも、私共はヒトの嗅覚、触覚、味覚、聴覚の重要性を提唱して参ります。
五感教育研究所、主席研究員、荒木行彦
アーティクルリソース:http://articlejapan.com/
|